抗菌・除菌と健康との関係-細菌編
春の陽気のなか、梅の花がきれいに咲いている北野天満宮にお詣りに行ってきました。
北野天満宮の境内には牛の像がたくさんまつられていて、その牛さんを撫ることが楽しみのひとつになっています。
境内の撫で牛の横にもアルコールスプレーが置かれていました。
気にせず、いつものように目に付いた牛さんを撫でまくってきましたが・・
牛さんかわいい♥
とにかく、どこに行ってもアルコール消毒液が置かれています。
抗菌・除菌成分を配合した商品もよく売れているようです。
電車やバスの車内は「抗菌・抗ウイルス加工」されています。
これらのおかげで病気を防げるのでしょうか。
それよりも、私たちの健康にどのような影響があるのか気になります。
人間は細菌と共生している
私たちの身体の中には、100兆個の細菌が住んでいるといわれます。
人間を作っている細胞の数は37兆個とか60兆個あるといわれていますので、身体の細胞数より多い細菌と暮らしてるわけです。
細菌によって身体が作られているといっても間違いではないようです。
体に住み着いている常在菌は健康を保つためにとても重要な働きをしていて、特に腸内細菌のバランスを整えることが、心身の健康を保つ鍵となります。
アルコール消毒の影響
手にアルコール消毒をすると、手が荒れてしまいますね。
手荒れは病気です。
アルコールは皮膚の常在菌を死滅させてしまいます。
私たちの皮膚には「皮膚常在菌」が住みついていて、病原菌などから守ってくれています。
常在菌がいないと手が荒れて、そこから病原菌が侵入しやすくなってしまいます。
つまりアルコール消毒をすると肌は荒れるし、病気にもかかりやすくなってしまうのです。
皮膚常在菌のはたらき
皮膚に存在する表皮ブドウ球菌は「皮膚常在菌」のひとつですが、汗や皮脂を食べて、グリセリンや脂肪酸を作り出します。
グリセリンは、肌のバリア機能を保って保湿してくれますから、天然の美容液を表皮ブドウ球菌が作り出してくれることになります。
脂肪酸はお肌を弱酸性に保って抗菌ペプチドというアミノ酸を作り出すことで、病原菌が増えるのを防いでくれます。
このようにして、細菌は皮膚を美しく保ち、病気から防いでくれているのです。
まさしく美肌菌です。
手についた細菌やウイルスを死滅させるのなら、石けんを使った手洗いで十分です。
手洗いの回数もほどほどが良いですね。
石けんの抗ウイルス効果については、別の機会にまとめたいと思います。
腸内細菌と健康
身体の中で細菌がたくさん住んでいる臓器は腸です。
免疫システムの7~8割は腸にあります。
なぜなら、口に入れたものはすべて腸を通りますから、そこで毒や異物を見つけ出して排除したり戦わなくてはなりません。
このシステムがうまく働いてこそ、健康に過ごすことができるわけです。
腸の中には1000種類もの細菌が住んでいるそうです。
重さにすると1~1.5kgにもなるとか。
「腸内細菌をみるとその人の病気がわかる」というほどに、健康と深い関係があることがわかっています。
肥満や糖尿病、がん、動脈硬化、炎症性腸疾患などの人の腸内細菌は、健常者とくらべて多様性が失われて著しく変化しています。
腸内細菌は臓器の問題だけでなく、精神の問題とも関わりがあることがわかっています。
病気までいかなくても、腸内細菌はセロトニンやドーパミンなどの神経伝達物質生成にも関わっているため、良い腸内細菌であると良い気分で過ごすことができるのです。
健康な腸内細菌は、善玉菌が優勢であるため悪玉菌の増殖が抑えられて、活発に活動して身体の免疫機能を高めてくれます。
よい気分で過ごせば、免疫もさらに上がるというサイクルができあがります。
子どもの腸内細菌と健康
腸内細菌のうちどの種類を持っているか、どの種類が多い・少ないのかというパターンは一人ひとり異なっているのですが、良い腸内細菌叢はどのようにして作られるのでしょうか。
多様性のある様々な細菌が住んでいるのが良い腸内細菌叢です。
驚くことに、3才までにその人特有の腸内細菌が定着すると言われています。
人は無菌状態で生まれてきて、生まれた後に共生する細菌を獲得していきます。
人と触れ合ったり、泥んこ遊びをしたり、ものをなめてみたりするのは経験としての大切さもありますし、健康な成長に必要なことなのです。
特に子どもには様々な場所で多くの細菌と触れさせることで、偏りのない多様な腸内細菌をもつことが、将来の健康へのカギとなります。
手に触れた抗菌・除菌成分は、口に入り腸内細菌を殺してしまう可能性があります。
私たち自身や周りに無数の細菌やウイルスがいることを考えれば、除菌というものは幻想であることがお分かりになるでしょう。
抗生物質も細菌を殺す作用がありますから、腸内細菌への影響は避けられません。
私たちはもともと健全な自己治癒力をもっています。
それを薬品や除菌商品で損ねてしまうとしたら大変残念なことだと思います。