夏を乗りきる3つの漢方
もうすぐ本格的な夏がやってきます。
暑さにあたったり、冷房で身体が冷えたりすることによる体調不良に備えておきたいものです。
熱中症や夏バテに役立つ3つの漢方薬をご紹介します。
五苓散(ごれいさん)
熱中症になったら、まず涼しいところで安静にして、水分、ナトリウムを補給します。
それから五苓散です。
五苓散は含まれている生薬が5種類と比較的少ないため、効果が速く現れます。
熱中症は身体が暑さに慣れていない時期に多い傾向があります。
暑さで、口の渇きや頭痛、吐き気、脱力感を生じます。
高熱や脱水の影響で組織障害が起こると、臓器のむくみも生じます。
汗をかいて脱水になるため、ナトリウムが欠乏して筋肉が硬直して手足を動かせなくなったり、筋肉痛を伴うこともあります。
手足が硬直することでとパニックになる人もいますが、ちゃんと戻りますから落ち着いてくださいね。
五苓散は利水剤
五苓散はとても適応範囲の広いお薬で、子どもにもよく使われる漢方薬の一つです。
むくみがあるときに使われることが多いため、利尿剤だと思われることがありますが、
利尿剤ではなく「利水剤」です。
利尿剤とは字のごとく尿量を増やすお薬で、多種類の西洋薬があります。
脱水になっても尿量を増やそうとがんばり続けます。
電解質異常が起こりやすい点にも注意が必要です。
利水剤は、体内の水のバランス異常を是正するお薬です。
身体にむくみがあるときは、むくんでいるところの水分を追い出してくれます。
逆に、身体の水分が不足しているときは水を補うように働きます。
脱水のときに五苓散を飲んでも、無理に尿を出そうとすることはありません。
体内の過剰な水分は排泄し、足りない部分には水を補ってくれます。
なんとも身体に優しいお薬です。
熱中症は脱水だけでなく、むくみも伴っているため五苓散が良いのです。
熱中症のときの五苓散の飲み方のコツ
熱中症になったとき、五苓散を飲むときは、お湯に溶かして飲むのが早く治すコツです。
戦国時代に曲直瀬道三(まなせ・どうさん)により書かれたと言われる古典(衆方規矩・しゅうほうきく)には次のように記載されています。
「汗をかいて、吐き気がして、めまいがして、尿量が減って、喉がかわいたときは、
五苓散を熱くして飲みなさい。」
あれっ、と思った方は鋭いです。
暑さにあたったときに、熱いものを飲む・・
まさに、ホメオパシー的なのです。
昔の人も、類似の法則を知っていて臨床で使っていたのですね。
清暑益気湯(せいしょえっきとう)
・高温多湿で汗をかきすぎて、身体がほてるとき
・熱中症で疲へいして、口が渇いて発汗が続くとき
・暑気あたりで下痢をしているとき
このようなときに清暑益気湯が良いでしょう。
清暑益気湯は、熱を冷まして、身体を潤し、胃腸機能を高めて元気を増してくれます。
キーワードは
発熱、頭痛、発汗、口渇
です。
補中益気湯(ほちゅうえっきとう)
夏に限らず、体力が衰えた人の倦怠感に使います。
補中益気湯も元気にしてくれる生薬が含まれています。
・熱感や汗、口の渇きはなくなったけど胃腸の具合が良くないとき
・だるくてぐったりしている
・疲れがとれない
・手足が抜けるようにだるい
・ここでひとつ気合を入れたい
こんなときは補中益気湯です。
夏バテは、8月の後半から多くなってきます。
夏の暑さで体調をくずして、食欲不振や疲労倦怠感が続きます。
清暑益気湯や補中益気湯は、体調が整うまでしばらく飲み続けるといいでしょう。