パニック障害と女神散
ストレスに対する反応
私たちが心身にストレスを受けると副腎皮質からコルチゾールというホルモンがたくさん分泌されます。
コルチゾールは血糖値を上げてエネルギーを貯えたり、血圧を上げたりしてストレスと戦う身体を守るってくれるホルモンです。
しかしその限界を超えて慢性的にストレスを受けたり、強いストレスがかかると、脳内のセロトニンという幸せホルモンの分泌が不足してしまい、うつ状態になりやすくなります。
ストレスを受けたときに十分なコルチゾールが分泌されないと、副腎髄質からアドレナリンが過剰に分泌されて、パニック状態になってしまいます。
アドレナリンには、覚醒作用のほか、血圧や心拍数を上げて身体を緊張・興奮状態にする働きがあり、非常事態に反応するためのホルモンです。
このような攻撃一筋のアドレナリンが一気に出てきたら、突発的な苦痛を感じて、パニックになってしまいますね。
パニックになる時とならない時
脳には新しい脳と古い脳があります。
新しい脳は、大脳の外側にあり、記憶や思考、言語といった高度な機能をつかさどっています。
普段の私たちの行動は、新しい脳である前頭前野(ぜんとうぜんや)が思考や、感情、行動を制御して理性的に行動するようになっています。
一方、
古い脳は大脳の内側にあり、呼吸、睡眠、食欲、性欲、自律神経など生きていくために必要な機能をつかさどっています。
恐怖や怒り、不安を感じたときには衝動的な行動をとって自分の身を守ります。
非常なストレスがかかったときは、新しい脳の前頭前野よりも古い脳である扁桃体(へんとうたい)の活動が活発になり、刺激に対して、怒りや逃避のような原始的な反応をすることになります。
扁桃体は好き・嫌いを判断するところです。
普段はパニックにならないように、前頭前野が扁桃体の活動にブレーキをかけているので冷静に行動できますが、非常時には判断中枢が扁桃体に変化します。
冷静に考えてもどうにもならないときは、原始的な本能で生き延びようとする生き物の知恵ですね。
睡眠の質や量が悪化すると、扁桃体が活性化して、よりパニックになりやすくなってしまします。
女神散
女神散という漢方薬があります。
メガミサン、なんて素敵な名前なのでしょう♥
実は「にょしんさん」と読みます。
現代では更年期障害の、のぼせやめまいに使われるお薬です。
昔は「安栄湯」(あんえいとう)と呼ばれていて、戦場でノイローゼになった兵士に使われていました。
気の弱い新兵さんに使ったり、
刀傷を負って、パニックになった武士に落ち着かせるために飲ませていたお薬でした。
即効性があるのですね。
元々は、男性のうつ症状などに使われていた処方でしたが、更年期障害によく効くことから、幕末から明治時代の漢方医である浅田宗伯(そうはく)によって、女神散と名づけました。
浅田宗伯は、あの有名なのど飴の処方を考案した人です。
更年期障害では、症状が多様でその症状がコロコロと変化したりします。
代表的な症状だけでも、のぼせ、ほてり、頭痛、イライラ、抑うつ、発汗、動悸、肩こり、めまい、疲労感、しびれ、耳鳴り・・・と書ききれないほど多彩です。
女神散が効くタイプは症状の数は少なくて、同じことを執拗に訴えるタイプの人だといわれています。
のぼせの症状も強いほうです。
このようなご婦人を、素敵な「女神」のように変えてくれるのが女神散なのです。
こんな感じ?
歴史から見てみると、女性だけでなく男性にも効く薬で、うつ症状やパニックにも効くことがわかります。
即効性も期待できるので、パニックになりやすい人は、こんなお薬もあるのだと知っていただけたら心強いことと思います。